目次

保管の注意

縫い目にそって折り、きちっと角を合わせてたたみ、1枚ずつたとう紙に入れタンスや衣装箱にしまいます。
繰越や身幅によっては、おくみ付けでたたむと衿が弓なりになることがあるので、その時は少し身頃側で折ります。
紋、刺繍、金彩加工の当て紙や芯に入れる紙は、湿気を吸ってカビの原因になることがあるので注意が必要です。
防虫剤には、樟脳、ナフタリン、バラジクロルベンゼン、エムペトリンなどの種類がありますが、2種類以上をタンスなどに入れると溶けだして液状になり、着物にシミとなってつくことがあります。残り少なくなって、新しいものを入れるときには別の種類を入れないよう注意が必要です。
絹は虫に食われることが少ないのでたくさん入れる必要はないと思います。
刺繍や金彩加工に銀や真鍮を使ったものがありますが、ゴム製品やウール素材等、硫黄を含んだものと一緒に入れると変色したり、着物の地色や柄色が薄くなったりする事があります。ウール素材のものは別のタンスに入れることをお勧めします。
建物内のガレージから車の排気ガスが部屋に入り込んだり、燃焼暖房をするところでは、そのガスがタンスの中に入ることにより変色することがあります。
タンスや衣装箱は、温度変化が少なく風通しのよい乾燥した部屋において下さい。
コンクリート住宅や、アルミサッシなどで気密性が高い住宅は結露した水分で湿度が高くなるので、常に部屋の空気を入れ換えて乾燥させるようにして下さい。
昔から虫干しが大切なことは伝えられています。初夏や秋の空気のからっとした時期ににタンスから出して風に当てることでカビの発生や虫の害を防ぐことが出来ます。
しかし、住宅事情や忙しさにまぎれて、最近ではほとんどおこなわれていないようです。カラッと晴れた日にタンスを開け、扇風機などで風を送ることでカビの発生が少しでも抑えられます。

縮みについて

一度しか着ていない、タンスに入れたままで一度も着ていない、ガード加工がしてあったのに袋が入った、縮んだなど、よく聞くお話です。反物を染め上げた後や織り上げた後の整理加工(ゆのしなど)により、引っ張られた状態が、湿度によって元に戻ろうとする時に起こります。 雨の日など湿度の高いとき、帯下などに汗をかいたとき、タンスの中の湿気を吸ったときなど、湿気が影響します。水に濡れることを防ぐガード加工(撥水加工)が施されたものでも湿気は防ぐことが出来ませんので縮むことがあります。
仕立ての前に、仕立屋さんが生地をアイロンで縮める作業(地のし・地直し)をして、狂いが少なくなるようにしていますが、それでも縮むことがあります。

袷の場合は表地と胴裏・八掛の収縮率が異なるために一方が縮んでもう一方縮みの少ない方が余って袋になります。

袋になった写真 表地が縮んで八掛が袋になっています。

胴はぎでつまむと八掛は袋にはなっていません。このことから、縮みは帯下の汗によるものと考えられます。